フェアであること|黒越誠治という男

私は、父が早く亡くなりましたので、26歳あたりで社長になりました。
もう20年以上も前のことです。

この20年間で、本当に色々な人に出会い、多くの影響を受けてきましたが、その中で私の経営に一番影響を与えた人をあげるとするのであれば「黒越誠治」という男です。
黒越さんに出会わなければ、確実に違った生き方をしていたと思いますし、出会えて良かったと心から思える男。
私に最も大きなインパクトを与えた人の一人です。

出会いは15年以上前、私が30歳前後くらいだったと記憶しています。
もう、今となっては少し曖昧ですが。。
共通の知人(私の大先輩)からの紹介。
黒越さんは、私より3歳か4歳年下ですが、まあ、社会人としてみれば、同世代。
大先輩から「面白い奴見つけたから一緒に飲もう、友達になりな」こんな出会いでした。

数年後には、彼の会社に、平安堂のHP運営を全てお願いするなど、ビジネスの親交も深くなっていきました。

普通に仲良く、仕事もがっつりやっていた仲でしたが、より深いレベルで信頼したというか、リスペクトした転機が10年ちょっと前くらい。
私が成田空港で和工芸品のセレクトショップを新業態で始めようと思ったのですが、どうにも資金的に足りない。
しかしながら、この出店チャンスは逃したくなく、彼に相談をしました。

快く出資を決めてくれ、二人で別会社を設立することとなったのですが、彼が最後までこだわったのは出資比率が私と彼でぴったり50%-50%であること。
(注:彼は適格機関投資家でもあり、直接共同代表として経営にコミットする時のみ50%出資で、もちろんスタートアップの出資、ハンズオンでは1%から出資。又インパクト投資家として社会起業家への支援もしています。)

資金余力は彼の方がありましたし、私が助けてもらうというか、出資して貰う立場でしたので、黒越さん60%とか、それこそ51%みたいに、黒越さん側が過半数の株を持つで良いと思っていましたし、それを提案していました。
が、彼は頑なに、50%-50%にこだわりました。
どちらにも主導権がない、意見が割れたら収拾がつかない株数比率です。

「二人で意見が分かれたらどうする?」
「意見が一致するまで議論しつづけましょう!」

「二人がケンカしたらどうする?」
「どっちかが全株を買い取りましょう」

シンプルで明快な答えですね。

一般的に、将来の禍根を残さないためにも、あるいは、見栄や支配欲からか、株の比率は大事とされています。
私も特に疑問を持たす、そんな風に考えていました。

青天の霹靂ですね。
この考え方。

同じ志で会社を立ち上げるのだから、フィフティ・フィフティ。
お互いがお互いを信じてフィフティ・フィフティ。
頑張った結果としての利益配分もフィフティ・フィフティ。

前々から、彼の経営理念の根底に「フェア」というものが大きく存在していて、もちろん、私もそこは大事にしていますし、経営で一番大事なものは何かと聞かれれば「フェアであること」と答えていますが、それを資本の論理まで落とし込めるというのは、目から鱗と言うか、驚きの瞬間でありました。

彼とは、その後も、色々な仕事を共にやっております。
もちろん、全てがフェア精神に溢れています。

また、彼は、金銭的には若くして相応の成功を収めました。
素晴らしいことです。
そして、彼は、それを躊躇なく、才能ある若い人たちの未来に投資を惜しみません。
(最近は、出資しても経営権をもたず、売り上げ増加に応じた分配をする出資形態を考案したり、日本で初めてソーシャルインパクトボンドを設計し実際に出資しているようです。)

若い人たちも、彼から学ぶことは沢山あるはずです。

彼からは、ここに書いたこと以外にも様々なことを学びました。
彼はブレることなく、このスタイルを貫くんだろうと思います。

私も、彼だけではないですが、才能ある方々から、謙虚にしっかりと学び続けていきたいと思います。

関連リンク
彼が創業した会社「株式会社 デジサーチアンドアドバタイジング」のHPはこちら。
黒越誠治の著書はこちら

=過去の投稿=
0)プロローグ
1)めし椀のススメ

ABOUTこの記事をかいた人

漆器 山田平安堂とHeiando Barの代表取締役。 昔はお酒が飲めなかったのに、今ではお酒マニア。 漆器とお酒の魅力を伝えます!